「堂本さんって…ただ単に慈善事業が好きなんですか」
「は?」
「それとも、暇潰しに似たようなもの…とか」
「おい。全く意味わかんねぇぞ」
俯き、自分の膝に置いた手を見つめながら楓は口走っていた。
「私とケンと…拾ってくれて。正直、なんでかわかりません…」
消え入るような声で、楓は言った。
その小さな声は、静かな時間の車内では十分堂本の耳に届いた。
堂本はそれまでミラー越しでしか楓を見ていなかったが、そこでくるりと楓に目をやった。
「おれはそんなに暇じゃねぇ」
その低い声に、『怒らせた』と思った楓は体をびくっとさせた。
その様子を見た堂本は、「はぁっ」と大きな息を吐いて、声色を変えた。
「あいつらは心配しなくてもおれからすぐ離れて行くさ」
堂本はそう言って、シートにぼすっと背を預ける。
その様子は、親のような、少し寂しそうに…でもそれを望んでいるみたいな微笑。
「あいつ“ら”…?」
その言い方だと、自分は含まれてない。
一人はケンとして、あとは誰を指しているのだろう。
楓は疑問に思い、聞き返した。
「あー…ま、お前ならいいか。おれが初めて人を拾ったのは、レンだ」
「れ、レンさん⁈」
「そう。んで、次が楓」
「……」
「ちなみにレンを拾ったのは確か5、6年前か」
「5、6…⁉」
堂本とレンの間には何か他にはない繋がりがあるとは思っていたけれど、まさか自分と同じような出会いだとは思いもしなかった。
しかも、それが5、6年前となれば……。
「ちゅ、中学生…?」
「高校生くらいに見えたけどな」
ははっと堂本が笑いながら答えた。