自分を拾ってくれた変わった人間だ。
その堂本が、他に同じように手を差し伸べていても可笑しい話ではない。
でも、楓の中で、何か引っかかる。
「堂本さんに声掛けて貰って、とりあえず今月いっぱいだけっていう条件でレンさんとこにいるんだ」
「今月いっぱい…」
「それまでに激安物件探さねぇと!」
さすがにホストクラブ経営者とはいえ、部屋を何個も用意するはずがない。
唯一自分が今居るアパートが堂本の物で、もしかしたら自分より先にこのケンを拾っていたなら―――。
それこそ自分はどうなっていたのだろう。
そんなことをぐるぐると楓は考えた。
「格安物件、か」
「オレ、恥ずかしいけど今まで家、出たことなくて」
「僕も、探してみようかな」
「え? なんで」
「“格安”に越したことないし。ホスト(ここ)で僕が稼げると思えないし」
「そうかぁ? シュウイケメンな方だと思うけど。ま、一緒に探すか?」
ニコニコと邪気のない笑顔を楓に向けてケンが言う。
だけど、きっとこんな笑顔をするケンでも、何か黒いものを内に秘めているんだろう。
楓はそう思うと、余計に親近感が湧いた。
そして同時に、同じ状況であるケンが家を見つけると言っているのだから、自分も早くそうして堂本に部屋を返すべきだ、と決心した。