「それだけなんだ。だからオレの価値はなんもない」
怒りなのか、悲しみなのか。
捉えようのないその声色のケンを、楓はただ見るしか出来ない。
「……ワリィ」
我に返ったのか、ケンはまたさっきまでの雰囲気に戻って楓に謝った。
「なんか、知り合ったばっかなのに…話しやすくて」
「…いや」
「話しやすいついででぶっちゃけると、オレ、今レンさんとこに居候させて貰ってんだ」
「えっ!」
「あ! これ、ナイショな!」
人差し指を口に添えて、ケンは片目を瞑って言った。
居候の相手がレン。
それが意外過ぎて、楓は目を暫く丸くしたままケンを見ていた。
「ん? あー。シュウってレンさんの下についてるんだっけ?」
「あ、ああ」
「レンさんて、掴めない人だよなぁ。でも悪い人じゃないと思うけど」
「…どうしてレンさんと…?」
レンが他人と住むことの違和感に、楓は質問しないでいられなかった。
一体どんな風に話をして、共に過ごす時間はどんな感じなのか。
するとケンは、また言いづらそうに苦笑しながら話し始める。
「シュウだけだぞ? レンさんにばれたらなんとなく…」
「わかってる」
「実は―――拾われたんだ」
「はぁ?!」
小さい声で話が出来るようにケンに気持ち、近づいた楓だが、その「拾われた」という言葉に思わず仰け反る。
「い、意味が…」
「ははは。いや、オレ家出人だから」
「あのレンさんが?」
「…いや。ここ、極秘情報な。拾ってくれたのは、堂本さん」
その名前を聞いて、楓は複雑な心境になった。