「あ、と…初めまして。シュウです」
「よろしくお願いします」
「あ、あの、僕もつい最近入ったばかりだから」
「あ、そうなんすか」


ぽつりぽつりと会話をしてみても、やっぱり楓にはこのケンという男がホストをするだなんて想像出来ないでいた。

それは、今入ってきたケンも同じものを感じたようで―――。


「シュウ…さんて、ホストっぽくないスね」
「えっ」
「あ! すみません」
「いや…」


そんなことを話しているうちに周りには誰も居なくなったことに気付いた楓は、開店準備をするよう促しながらまた続ける。


「自分でも、そう思うし」
「へぇ…。あの、シュウさんていくつですか」
「シュウ、でいいから。僕はじゅ……いや、ハタチ」
「ハタチ。じゃあ俺と一緒だ」


そう答えてはにかみながらテーブルを拭く姿は、楓の警戒心を和らげた。


(こんな感じの男子、クラスに一人はいたな)


そんなことを思い出して、ケンを見る。
楓のその視線に気づいたケンは不思議そうに楓を見返した。


「?」
「あ…っと、じゃあテーブルよろしく」
「はい!」
「…あと、同じ新人だから、敬語っぽいのもナシで…」
「……オケー」


なんとなく、この新人のケンは話しやすい。
同じ立場の男が少し自分に似たような人間であることに、楓は心が軽くなった。