「瑠璃が初めてなんだ」
「そう。超新人だから」
「そうなんだ…」


楓の“初めて”が嬉しかったらしい瑠璃は、頬を仄かに染めてオレンジジュースを口に付けた。


「…上京して、あんまり友達居なくって…家でも外でもネットばっか」


ぽつぽつと瑠璃が身の上話を口にする。
楓はそれを黙って真剣に聞いていた。


「そうしたら、ある掲示板の書き込みに『ホストクラブは寂しさを紛らわせてくれる』ようなこと書いてて…」
「…それで?」


グラスを両手で包みこむように持ったまま、瑠璃は無言でこっくりと頷いた。


「『初回は格安』とか、色々見てたら興味湧いて…でも、ここにして…シュウがいて良かった」
「…僕は何も…」
「なんか、こうして周りのホストの人見てたら、やっぱり背伸びしちゃって疲れそう…でもシュウはすごく落ち着ける雰囲気だったから」


にっこりと笑って瑠璃は体を楓に真っ直ぐ向けた。


「―――また、来てもいい?」
「うん。いつでも」


そうして初めての指名客を楓は無事に送りだした。

いろいろな客がいるものだ、と思いながら。