「あ、と…なんてお呼びすれば…?」
「あっ…る、瑠璃(るり)って言います!」
「瑠璃、ちゃん…」
「あ、呼び捨てで構いません! あと敬語も大丈夫ですから…」


そう言って照れるように笑う、瑠璃という女は、思っていたような客ではなさそうだった。

化粧も服装も、派手でもなく。ブランド物を引っ提げている様子もない。

むしろ、ホストクラブ(こんなとこ)に出入りするようにも見えない彼女に、楓は安堵と共に、違和感を感じていた。


「あー…と、なにか、飲む?」
「あの…実はまだ未成年で…19なんです」
「えっ?」


ホストクラブに入店するのには未成年であっても構わない。
楓もそのことは知識として教えられていた。
が、いざ、本当に未成年の客を目の当たりにしたのは初めてで、しかもそれが自分と同い年ということについ声を上げてしまった。


「あ、ご、ごめんなさい…」
「え? どうして…」
「だ、だって…お金に…ならないですもんね…?」


消え入るような声で、小さな体をさらに竦める瑠璃を横で見て、楓はそっと肩に手を置いた。


「…いや。僕、そういうの、あんまり…」
「…え?」
「ていうか、あなたが、初めてのお客さんだから」


顔を赤くして涙目で楓を見あげる瑠璃は、女の楓から見てもすごく魅力的な女の子だった。

そして、ぎこちない雰囲気で交わされつつあった会話が、だんだんと自然なものになって行く。