―――それから数日経った。


ホストの給料なんて初めは知れてるもので。
やはり、人気商売で、指名されてナンボだと再確認したある日―――…。


「4番、シュウ指名入ったよ」


黒服の遠藤がそっと楓に通達しに来た。


「ついに、だな」


優しい笑顔でそういう彼は、おそらく堂本と同じくらいの年齢で。
容姿もいいとこを見ると、過去に同じようにホストをしていたんだろう、と楓は思う。


(それはさておき―――)


いざ、「指名入った」と聞かされるとそれは緊張してしまう。
いつもは複数で客を相手にして、しかもそれはヘルプなわけだから指名された今とは緊張感も訳が違う。


(…誰だよ、私を指名だなんて。奇特な人もいるもんだ)


これをきっかけにナンバー入りしなくとも、少し指名が取れるだけでいいと楓は考えながら4番のテーブルへ向かった。

そしていつもレンを見ている姿を真似るように、ゆっくり、間違えないように挨拶をする。


「いらっしゃいませ。ご指名ありがとうございます。シュウです」


片膝をつけ、まるで舞踏会で姫に挨拶するような格好で。
そうして緊張がバレないように、胸を落ち着かせて顔を上げた。


「あ…初めまして…」


そこにちょこんと座っていたのは、楓とは違って小柄のふわりとした印象の女の子だった。