「圭輔……」
向かい合って立つ、まだ少年ぽさが残る圭輔を、複雑な気持ちで見つめる。
圭輔は変わらず、堂本を見ることなく、少し震えている自分の手だけに視線を落としていた。
「……そんな苦しい顔してるくらいなら、吐いちゃえよ」
「それは……堂本さんはオレとは違う関係だから言えるんですよ。決定的に違う――――血が繋がってるかそうじゃないかって」
堂本を責めるように言ったって仕方がない。
だけど、同じような想いを持つ相手だからこそ、羨望感が溢れることを否めない。
こんなことを言ったところで何も変わりはしない。
自分の望みが叶うことなんてない。
その苦しさが表情に露わになっているから、堂本は言った。
「確かに、おれがなんか言ってもお前にゃ面白くないのかもしれねぇけど。けど、おれだってそれなりのリスクはあるし、お前がここであーだこーだ言ったって、結局それだけで終わっちまうぞ。
楓(あいつ)はもう歩きはじめてるんだから、追いかけて何か伝えるなら、今しかないと思うけどな?」
それでも迷っている圭輔に近づくと、横に並んで肩を抱く。
そして頭の上で、静かな声が降ってくる。
「――おれは、今まで菫の幸せを一番に選んだつもりだ。自分の隣に居ても居なくてもな」
それを聞いて、ようやく圭輔は重い頭を上げ、自分を熱い眼差しで見つめている双眼と対峙した。
「ちょっとクサイけどな」
「……はあ……。堂本さんが言うと、やたらと説得力あるんですよ……」
「経験者だからな」
「本当に素直に言えば、オレも前に進めると思いますか……?」
堂本は抱いていた肩に置いた手に力を込め、不敵な笑みを浮かべて答える。
「――お前次第だ」