それから3日後。
菫の仕事が休みということで、それに合わせて約束をしていた。
待ち合わせ時間は午前10時。
場所はお互いの場所からさほど遠くない街の一件のカフェ。
先にそこに現れたのは菫。
天気のいい日だったために、せっかくだからとオープンテラスの席についた。
店員に「待ち合わせで揃ってから注文します」と伝えると、柔らかな日差しの元、心地良く椅子にもたれかかった。
シャラッと腕を表に向けて時計を見ると、まだ約束まで15分はある。
今度は頬杖をつきながら、菫はこれから再会する堂本(義弟)のことを考えていた。
3日前に電話で聞こえた声は、あの頃と比べて少し低くなっていた気がする。
真っ黒な髪に、それと同じ黒い瞳をした由樹――一体どんな大人になっているのだろう。
そんなことを休むことなく考えて、差し出されていた水にも口をつけずにいた。
少し高い位置にあるテラスから、通りの奥へと焦点を当てながら変わらず一人で堂本を想っていると、仲よさげなカップルの会話が聞こえてくる。
「お前、眠くないの?」
「うん。大丈夫。ごめんね、付き合わせて……」
「や、オレは別に! 出来ることしかしねぇから」
「ふふ、ありがと」
男性は背が高くて、明るい髪をしていた。
顔は見てみると、男らしさの中にも優しそうな表情をしている。
隣を歩く女性は、ショートの髪がサラサラとしていて色白だ。
横の男の人を見て歩いているから、顔がよくわからない。
何気なく観察していた菫の元に、その二人が近づいてきた。
そして、すれ違うその一瞬。
その女性と菫が目を合わせた。