「これが、レン。ウチのNo.1だ」

(な、No.1⁈)


楓は心底驚いた。
少しの時間しか会って、話も大してしていないが。
だけど、あんなに他人に一線を引き、お世辞にも愛想なんてものがなかった印象のあの男が。
あまりに驚いて、その堂本が開いたホストファイルから目を離せないでいた。


「あー…なるほど。ギャップがな」


その楓の様子を理解した堂本が可笑しそうに言った。


「おれも初め驚いた。あいつの割り切り方、半端ねぇからなー…ああ、でも楓にとっていい見本になるか」
「確かに、顔は綺麗だったけど…」

(でも笑うことはおろか、一度でも目を合わせようとしなかった…)


「あいつの人間性はおれが保証する。ここでお前の秘密を共有してるのは、おれとお前とレンだけだ」


不思議と目を奪われた。
“レン”の話をしている堂本は何かが違う。
元々穏やかなタイプっぽいが、とても柔らかい雰囲気でものを言う。

『楓と背格好が似てるやつがいるから』

女である楓が、紳士服を買いに行くのは目立つ。その理由から、そう言ってレンのところへ行けと言ったのだと思った。

だけど本当は―――。

本当は、レンを心から信用し、安心してるから堂本は自分のことを話したのだとわかった。


「わかりました」


それから楓は、他のホストらがくる前に、ある程度の知識や店の中などを堂本に叩き込まれた。