「あの……知って、しまったんだよ……ね?」
消え入るような声で言い、バツが悪そうに、楓は拳を作った手を膝に乗せ、身を縮こませた。
目を逸らしたままの楓に、瑠璃は逆に聞き返す。
「――シュウのついていた嘘のこと?」
瑠璃に言われると、楓の胸はズキッと痛む。
嘘を自らついておいて、良心が痛むだなんて、そんな勝手なことはない。
しかし、唯一ホストの自分(シュウ)を選んでくれた瑠璃だからこそ、それが本当の思いだ。
「ごめん……。その……面白半分とか、からかってたとか、決してそういうんじゃ……」
「本当に?」
楓はその質問に、今日初めて瑠璃とまともに向き合った。
いつも真っ直ぐに自分を見て、笑いかける瑠璃。
けれど今は真剣な眼差し。
それに真摯に応えるように楓は言った。
「誓う。でも……瑠璃が軽蔑したり、許せないと言われたら――それを受け止める」
楓の言葉を聞き終えた瑠璃は、肩下まであるストレートの髪を片耳に掛け、ふ、と睫毛で瞳を隠す。
そして再び開いた瞳には、優しい光が灯っていた。
「軽蔑なんかしない。だって、シュウはシュウだもん」
大きい音のBGMに、隣のテーブルはやけに盛り上がっている。
それに比べて楓と瑠璃は、静かで、フロア内からは浮いて見えるだろう。
もしかしたら、なにかトラブルでも――と思われるかもしれない。
だけど実際は、とても穏やかな空気が漂っていた。
「シュウ」
「……なに?」
「今、シュウと私って、どんな関係になるのかな」
「え? え、と――友達、かな?」
真面目に考えて答えただけ。
その楓の答えに、瑠璃は細めた目に涙を浮かべて笑った。
「――嬉しい。東京(こっち)にきて、初めて友達が出来た……」