「おい。どこまで行くんだよ?」


リュウに連れられるまま、かなり歩いた先の路地に入ったケンが言った。


「お前はいつから知ってたんだ? 初めからか? もしかして、早出残業の時間でヤッ――」
「んなワケねぇだろ! 先に聞いてんのはこっちだろ。どっからこのこと……」


ケンの頭は楓を守ることでいっぱいだ。

拳を握りしめて問い質すと、あっさりとリュウはネタバラシをした。


「シュウ(あいつ)の親父っつーやつがいたらしくてな。ご丁寧に女子高生の時の写真を持って」

(……! 楓の思った通りかよ! ほんとに親父がもう、すぐ近くに居るだなんて)


呆然としていたケンの顔に、リュウが近づく。
そして目の前でニヤッと笑い、面白そうに言う。


「初めからなんか胡散臭いとは感じてたけどな――オレのカンも捨てたもんじゃないらしい」
「そんなこと、どーでもいいんだよ! その、あいつの親父とはどこでっ」
「お前はわかりやすいなぁ。そんなに惚れてんの? あの“オンナ”に」


余裕の顔で追い詰めるリュウに対して、ケンは後手に回ってしまっている。

リュウ相手なのだから、適当に嘘をついてあしらえばいいものを、ケンは馬鹿正直な性格が災いして、それが出来なかった。

言葉に詰まったケンの様子で、ますますリュウは優位に立つ。


「図星か。なるほどねー。て、ことはさ。例えばオレが――狙っちゃったらどーする?」
「ん、なっ……‼」
「オレ、あいつの容姿(見た目)、嫌いじゃねぇしー…気が強く見えて実際攻めたら弱そうなとことか、すげぇ興味ある」


リュウの魂胆を聞いて、思わずケンは握りしめていた拳を、ヒュッと後ろに引いた。

振りかざしたケンの手を、予測済みだったリュウはひらりとかわす。
そして何かを合図するように、片手を軽く上げた。


「ホストのナリしたイイ女――こんなに面白いことってないよなぁ?」
「てめっ……いい加減にっ――――⁈」