横顔に見とれていた私に、男が聞いてきた。
「何や?何か顔についてるか?」
私は我に帰った。
「いいえ……」
「そんな、じっと見たら恥ずかしいやないか」
「あっ…すみません」
「酒は飲める方か?」
「あのう……あまり強くないですが、少しぐらいなら……」
甘くて低音で響く様なこの男の関西弁が……私の耳の奥をくすぐった。
そのテーブルには、バーボンのボトルが置かれていた。
その客は、グラスに氷を入れ始めた。
カキン~カキン~と、かち割り氷の音が響く。
この店は、製氷器を使わずに、氷の固まりを仕入れ、アイスピックで砕きお客に出していた。
その客はバーボンを注ぎ、水割りを作り出した……それって私の水割り?作ってくれてるの?
「たかが水割りでも、愛情込めて作るのと、そうでないのとは、味が違ってくるのや、
ほら、飲んでみ」
と、琥珀色に染まったグラスを私は受け取り……
ゴクン……
と、本当に思った、バーボンウイスキーって、こんなに美味しい飲み物でしたっけ?