●ウチ●
久美子が来てから2週間が過ぎた、
随分仕事も慣れてきたみたい。
ウチとえりが同伴の時も、店を開け、一人で準備出来るまでに成長した。
相変わらず、酒は弱いけど……少しずつでも売上を伸ばそうとしている心意気が見えてきた。
酒につぶれる事はなくなったけど、帰りは、その大きな体でいつもフラフラ千鳥足で帰る久美子やった。
でもな、失敗も多々とやってくれるのや、これが……。
お客がタバコを口にしたら、火を点けるのがウチらの仕事。
久美子が、カウンター越しで、不動産会社の社長を相手している時の事やった。
その社長がタバコをくわえた時、久美子はカウンターからその長い大きな手を伸ばし、ライターで火を点けた。
その瞬間!
社長の前髪から煙が!
前髪の燃えている本人は、全く気付いてない!?
ウチはあわてて走って行き、その火を手で払い消した。
久美子の手にしていたライターの火力が、最大になっていたのが原因やった。
それでなくても、この頃、抜け毛がひどいのや……と、ずって聞かされていたと言うのに……。
ボトル1本サービスして、平謝りで許して貰った。