「7時から12時までの時給しか渡されへんで……それ以降は使い物になれへんかったからな」
と、アザラシ久美子は、まんげつママに1万円札の入った茶封筒を渡され、店から追い出された。
と、まんげつママも店から出て来て、鍵を閉めている。
???店の2階が住まいじゃなかったの?
「ウチは電車で帰るからな、
ほな、今日また7時に待ってるで」
と、まんげつママは、その小さな体で、
しっかりとした足取りで駅に向かって歩いて行った。
その背中を唖然と見送るアザラシが、ここに一頭……
あの若さで、あの小さな体で、あの堂々とした後ろ姿は、いったい何?
ポカンと口を開けていたが……
やがて、アザラシは向きを変え、ふらついた足どりのまま、一人住いのマンションへと歩いて帰って行った、茶封筒を握りしめて……。