今日も1日、身を粉にして働いた分が、網目状の金庫に7000円ちょっと。


ウチは、粉を練る大きなバケツを洗っていた。


その時、ケータイに着信が……


トゥルルルルル♪ トゥルルルルル♪


「キング」で知り合った女の先輩やった。


えぇ?何?何やろか?


「久しぶりやん!
みづき、全然この頃、顔見せへんから、どないしたんかなぁと思って……
今な、直樹先輩らと一緒におるねん、
先輩が、みづきに電話して、呼んだら?って言うから。
今から走りに行くんやけど、行けへん?」


……って、直樹先輩?


嘘やん……一緒なん?直樹先輩……


ウチの心臓は、ドキドキ、ドキドキと、人に聞こえそうなくらいの音を出した。

ケータイを握りしめていた手が汗ばんだ。

「わかった、今から行くわ!」


その時、目が合った、ばあちゃんと……。


その目は……もう怒りも通り越し、哀しみの域に入っていた。


ウチは無情にも、その哀しみの域を無視し、洗いかけのバケツもほったらかし、急いで家の中に入って、慌てて着替えた。