みぞは埋まる事なく、それよりも広く深くなっていく一方。
そのみぞに……哀しみの水が流れ出し……
たこ焼き屋の仕事は、また、ばあちゃん1人だけに戻った。
学校へは、行ったり行かなかったりの日々が続き、塾は完全にやめてしまう事に……
夜から朝にかけて、「キング」で時間を潰したり、仲間の車やバイクに乗せて貰い、走りにも参加した。
それでも……たこ婆は毎日、毎日、曲がった指で黙ってたこ焼きを焼き続けた。
「ぶらぶら、ぶらぶらと……目標も何もなしに息してるだけの人間は、この世のクズじゃい!ゴミじゃい!」
「ウチの事は、ほっといてんか~
がたがた、がたがたうるさいんじゃ!
このクソババア~」
売り言葉に買い言葉、人は興奮したら、心にないことまで口から出てしまう。
顔を合わせると直ぐ口喧嘩になり、また飛び出すといった繰り返しが続く中で……
高校進学の話なんてもう夢の夢。
出席日数も成績も何もかも足りんかったウチは……将来の消えた今を生きた。
でも……この時、たこ婆の胸はウチなんかよりも100倍辛く、苦しく、哀しかったに違いない。