大黒柱にウチがなってから、まだそんなに年月は経ってない。
そらぁそぅやろ、
まだ17やで、世間では学生服を着て皆、勉強してる時期や。
表の看板見たか?
たこ焼き屋の看板や……
今は閉店して営業してないけど、ウチは、あのたこ焼き屋に育てられた。
この家の初代の大黒柱は、ばあちゃんやった。
ウチを生んで直ぐに死んだ母親に代わり、ばあちゃんは、このたこ焼き屋を営みながらウチを育てた。
仕事中……ウチは、いつもばあちゃんの背中におんぶされていたんや。
たこ焼きを焼きながら、ばあちゃんが客と喋る……
ウチはばあちゃんの背中に耳をあて、その背中と言うスピーカー越しに、ばあちゃんの声を聞く。
今でも鼓膜の奥深いとこに、ばあちゃんの声が残ってる。
父親はどうしたかって?
オカンが死んで、そんなに日にちも経ってないのに、オトンは直ぐに女を見つけて再婚したらしい。
ウチの養育費……持って来ていたのは最初の頃だけで、いつかそれもストップしてしまい、その内、顔も見せへんようになった。
ほんまに、無責任な男やで……。