ママがハスキーな声で言った。
「久美子お疲れさん!また明日頼むで♪」
最早……
私の道は帰るしか、店外に出るしか選択肢はなかった。
「お先に失礼します」
外に出て、ゆっくりドアを閉めた。
表に出たら、黒田の車が止まっていた。
私はゆっくり歩く。
黒田が追いかけて来るんじゃないかって?
淡い期待を……じゃないや、濃い濃い、濃厚な期待を胸に抱き小股で歩く私。
……でも、その期待からは何も生まれてはこなかった。
私の後ろから、誰も歩いて来る気配はない、何の音もしない、静かなものだった。
私は立ち止まった。
このまま部屋に帰れる訳なんてないじゃん、私は向きを変えた。
店を睨む……あそこに、あの場所に、恋しい琥珀色の君がいるのに……
なのに……この状態って何?何で?
ねぇ~和男さん、私ってあなたの、いったい何なのよ?