エレベーターに乗って、携帯を見た。着信ありのランプ。彼からだ。

仕方ない。こんな遅くまでかかってるなんて知らないし、「おやすみ」はいつもすでに終わっている時間だ。

優しい彼の、小さな束縛。

彼のことは好きだし、私を愛してくれていることを感じるけれど、最近はどこか煩わしさを感じてしまう。

贅沢な悩みだとは、分かっている。
誰かが自分を思ってくれる、ありがたさの裏返しの煩わしさ。

1階について時計を見ると23時30分。あと30分したら、もう明日だ。明日は平日、仕事もある。

「あーあ」

心の中でつぶやいていた言葉が、口から出てしまった。

「でっかいため息」

出入口を見ると、会議に召集されてしまった田畑くんがいた。