電車がゆっくりと速度を落としホームについた時、もうすぐ開こうとするドアの前に、私をまっすぐ見つめる瞳があった。

そこに俊介がいた。

私はびっくりし、言葉にならずドアが開いた後も降りることも出来ず、立ちすくんでいた。

発車のアナウンスが車内に流れ始めたとき、ホームから手が伸び、腕をつかまれホームへと引っ張られた。

電車がゆっくりと発車した。

俊介はあわてて、つかんだままだった私の腕を離した。

「ごめんな、無理やり降りさせて・・・もしかしてここで降りなかった?引っ越ししたのか?」

私は首を振り、しぼりだすように返事をした。

「・・・変わってないよ・・・・ちょっと、びっくりして・・・」

俊介に聞こえるんじゃないかと思うほど、体中に大音量でドキドキが鳴り響いている。

「そっ、そうだよな・・・ごめん。」

ドキドキが一段と大きくなるのを感じた。

「この前さ、電車で・・・会ったっていうか・・・気づいてただろ?」
私は、頭の中が真っ白になりうなずくことしか出来ずにいた。


二人の間にぎこちない空気が流れ始めたとき、俊介があの公園を指差した。

「こんなとこで立ち話もなんだし、公園でちょっと話さないか?」

私は、まだ、うなずくことしかできないでいた。




駅と公園は本当に目と鼻の先にある。会話もないまま先に歩く俊介の背中を見つめていた。

あんなに会いたかった俊介がそこにいる。

あんなに話そうと思っていたのに、いざ前にすると何から話していいかわからない。

自分の意気地の無さが嫌になる。

でも、言わなきゃだめだ…、

ちゃんと伝えなきゃ。