「いや。あの会社は図体が大きすぎる。何か不正行為などがあった場合、俺も簡単に責任は取れない」


「ですが、もう株式は四割以上買われているのですよ」


「そこなんだ、そこ。仮にあっちの人間が取締役会に複数の人間を送り込んできて、妙な提案などをしてきたら、俺だって頭痛いよ」


「妙な提案というと、やはり子会社化などのことですか?」


「まあ、そうだな。社長だって言ってる。『君はあの尾田って人間に任せてていいのか?』って」


「私も一定の責任は取ります。ですが、さすがに危ない橋を渡りたくはありません」


「危ない橋って。……君、やはりあの成川って人間にしてやられたって思ってるのか?」


「まあ、そうですね。私も一人間ですから、その手のことを感じないわけじゃないです」


「でも、どこからどこまで突っつき回しても、やっぱあの株の取得法はいただけないね」


 瀬岡が苦笑いする。


 やはり加賀美コンツェルンにしてやられたと感じているのだろう。