慌てて駆け寄り、


「私も自分の分ぐらい、自分で払いますよ」


 と言うと、成川が、


「これ、領収書持っておけば、経費で落ちるんです。ホテル代もタクシー代も飛行機代もですけどね」


 と返し、一礼して店外へと出る。
 

 そして目抜き通りでタクシーを一台拾い、乗り込んだ。


 会食の席であっという間に取引の話が済んだのである。


 怖いと思えるぐらいだった。


 果たして大丈夫なのかなと思えるぐらい。


 スマホが鳴り出す。


 こんな時間に誰からだろうと思って着信窓を見ると、瀬岡からだった。


 成川との話が済んだかどうか、訊くためだろう。