舌先に冷たさが残る食べ物だったが、別に構わない。


 この季節らしくてよかった。


 成川が食事後、


「持参しているノートパソコンに契約書の原本がデータとして入っておりますので、尾田さんのパソコンのメールボックス宛に添付ファイルにてお送りしておきます。後でご覧になってください」


 と言う。


 食事が済み、午後九時を回った頃、訊いてみた。


「今日はありがとうございました。これからのご予定は?」


「今夜、ここの街に取ってあるビジネスホテルに泊まって、明日朝一で東京に戻ります。仕事が待ってますので」


「分かりました。お気を付けてお帰りください」


「お気遣い痛み入ります。では」


 成川が立ち上がり、店出入り口で二人分の食事代を清算する。