「――何やコレ?」
見慣れないそれを俺は
ひょいとつまみあげる。
適当にいろんな指に嵌めてみれば
左手の薬指にぴったりやった。
おかんのもんかと思ったけど
どうやら俺のらしい。
(俺、指輪なんかつける
趣味あったっけ?)
そんな事を思いながら
ふと指輪の裏を覗き込めば
そこにはアルファベットが
彫られとった。
「H・I……Y・J……?」
H・Iはきっと
俺のイニシャルやと思う。
市上陽でH・I。
でもこのY・Jって誰や?
友達にもバスケ部にも
Jから始まる苗字の奴は
おらんかった筈や。
でも指輪に彫るくらいやし……。