学校で過ごしてみて

そういうことは多々あった。

ふと物足りなさを覚える場面。

琉樹とお昼を食べに屋上に行った時や

授業中に他のクラスの

体育の様子を覗いたとき。

何か言い表せん物足りなさに

俺の胸にはもやもやが溜まっていく。



『頭を打ったので

記憶になんらかの影響が

あるかもしれませんね』



お医者さんが言いよった言葉が

頭に浮かんだ。

俺、何か忘れとるんかな?

けど、どんなに頭を捻っても

全く思い出せる気配なんてなくて

もやもやしとるのが嫌で俺は

頭を振って無理矢理忘れることにした。


(気にせんとこ、気にせんとこ!)


忘れくらいなんやから

どうでもええことなんや。

そう自分に言い聞かせて

俺は自転車のスピードを上げた。