廊下に静寂が戻り、先輩が溜め息をついてこちらに戻ってくる足音が聞こえた

「先輩…」

先輩が私に気付いて驚いた顔をしたが、直ぐにマズそうな顔をしたのを私は見逃さなかった

「もしかして、今の聞いてた?」

「先輩のお話って、この事だったんですか?好きな人がいるって…」

先輩はきまり悪そうに「うん」と頷いた…

この人は、好きな人がいるのに他の女の子を身代わりに抱くんだ…

そう思ったら、一気に怒りが込み上げて来て、自分の中の冷静さが小さく消えていくのを感じた…

しかも馬鹿な事にまんまと先輩に騙されて、私が身代わりに抱かれたことが許せなかった。

先輩が私を好きじゃなくても、『私』だから抱いてくれたのならそれで良かった…例え好きじゃなかったとしても…

でも違う!先輩は…先輩は私を抱きながら他の人を想っていたんだ!それは私じゃなくても良かったんだ…

こんな悲しいことって…こんな惨めなことって無いよ…先輩…あんまりだ…

…あんまりだよ…

「先輩…私の事はどうでもよかったんですね…」

「ヒメ…」

「狡い…汚い…先輩は汚い!!私の事は散々汚したくせに!!!今更…」