「儂は、自分が憎い。
不器用なのだ。どうにも」



「…そうだな。私もそう思う。」


「うむ、お前には敬語は似合わん。」


さいですか。


この人はつかみどころがありそうに見えて全く掴めないな…



「儂は、蛙(かわず)なのだ。
大海を知りすぎてしまって逆に怖じ気づいた蛙なのだよ。
井のなかにとじ込もって、大海を知らぬふりをする。」




井のなかの蛙大海を知らず…



でもそれ(芹沢)は、大海を知っていてなお知らないふりをしていた、ただの臆病者。


起用を見繕った不器用の塊。





「笑ってしまうだろう。
今回のことも分かっていた結果だ。
見栄をはらせて言わせてもらうと、自分で仕向けたと言っても過言ではない。」


今回のこと…それは暗殺のことなのだろう…




「馬鹿だな。」


「あぁ、本当に…。
儂は馬鹿だ。大馬鹿だ。」





自分から、この先の行く末について考えて事を運ぶなんて…何処まで演技してたかもわからない。

全て演技だったのかも知れない…



もしかしたらもっと先の事まで見据えて自ら悪役をかって出たのかもしれない。
どちらが未来から来た者か分からないな……


私は情けない。





不器用すぎる。

馬鹿で本当に不器用だ。





でも


「貴方は、間違ってはいない…。」







なにを根拠に言ったのかわからないけど、自然と口が動いた。


こんな素晴らしい逸材を失うのは勿体なすぎる…。



でも、それを口にはしなかった。

いや、出来なかった。