その声が弱々しかったことがまたショックで、
「あ、ああ」
としか言えなかった。
「久しぶりだな」
そう言いながら起き上がろうとする正太郎を、妙子が気遣い、そっと背中に手を回す。
父親のあまりに弱々しい姿を目の当たりにして、積年のわだかまりをどこへ持っていけばいいのか、わからなくなってしまった。
「調子はどうだ」
正太郎の曖昧な問いに、
「まあ、なんとか」
としか言えなかった。
二人のぎこちない会話はすぐに途切れ、病室はなんとも気まずい空気が漂っていた。
しばらくすると、その居心地の悪さに耐え切れなくなったのか、圭介は、
「ちょっと、煙草吸ってくるわ」
と病室を出て行ってしまった。
圭介が扉を閉めた音が病室にいやに大きく響いた。
「涼介。ちゃんとご飯、食べてる?」
重苦しい沈黙を破ったのは、妙子だった。
妙子は心配そうな面持ちで、阿久津を見上げる。
「ああ」
阿久津は目を合わさないまま、淡々と答えた。