「……私は今来たから解らない。けど、その大切な場所を荒らされるのは私も嫌だ。だから、場所を教えて?」

天羽は明日香に向かって微笑みかける。

「わかったわ。ついて来て」

校舎から少し離れたところに、木が生い茂る小さな森があった。

「こっち」

森を抜けると、花畑が、否、花畑“だった”跡がある広場と、小さな石がまばらに散らばっていた。

「ここは?」

「私の大切な場所。私とあの人との思い出の場所。私の……お墓があるところよ」

明日香は石を見つめ触れようとする。

「(やっぱり……)」

薄々は気が付いていた。

「私には触れられないの。あの人の温もりに。わかってるわよ?でもね、私には未練がありすぎる」

石を通りすぎる手を握って小さく涙を流す。

「あの人達を許してくれなんて言わないし、今すぐ未練をなくすことなんて出来ないのは承知してるつもり。むしろ、呪ってやればいいと私は思う」

天羽は足元の無残な花を拾う。

「それでも一応あの人達も生きている人間。だから私はあまりにも無力だけど、私に出来ることなら手伝わせてほしい」

明日香に頭を下げると、不意に頭が冷たさを感じた。

「お願い。私の墓石だけは元通りにしてくれないかしら?」

頭を上げると、天羽は不敵に微笑んだ。

「わかった。任せてよ!……ねぇ、あの人達に思い知らせてやらない?」

「!?……あなた、なかなかの性格じゃない。良いわ。乗ってあげる」

二人は少女らしい無邪気な笑顔を浮かべ、墓石を元に戻す作業を繰り返した。