「なっ、急にどうしたの?」
「ん?沙綾って物忘れ激しそうなのに、覚ええてくれたから、少し感動?」
「それ……酷くない?」
いつの間にか立ち上がってた天羽が振り返り、何かを思い出したような顔をした。
「そういえば、沙綾のために用意したの、忘れてた」
「何を?」
「クッキー。ちょっと待って」
ベンチの隅に置いてあった鞄の中を探し始める。
「おー、待つ待つ」
しばらくして袋の中からクシャクシャになったオレンジの紙袋を取り出す。
「あったーっ」
嬉しそうな天羽に対し、沙綾は何か言いたげな顔で紙袋を見ていた。
「何?どうしたの?」
そんな沙綾に小首を傾げながら尋ねる。
「いや、別に……」
「んじゃあ、はいっ」
紙袋を前に突出す。
「中身見せて?」
沙綾は受け取ろうとはせず、ただ笑った。
「はーい」
中から取り出したのはクッキーとは思えないほど、粉々になったクッキー。
だから、持っているクッキーも小さな欠片。
「……少し粉々だけど、食べれるよ?」
「少し?」
沙綾はその粉を凝視したまま問う。
「そうだよ。はいあーん」
「いや、食べれないけどね?」
文句を言いながら粉を口の中に流し込む天羽。
「うわ……私なら、絶対に無理だわ」
「おーひーおー?」