教室に入った瞬間、天羽に視線が注がれる。
「遅刻にも程があるでしょう?五木さん」
「てへっ!……遅刻しました!!」
敬礼のポーズをとると、クラスに笑いが起きる。
「見ればわかります。早く席に着きなさい」
「はいであります!!」
直角に頭を下げ、自分の席へと着く。
「おはよー天羽」
隣から小声が聞こえ、そちらを向くと、特に中の良い友達になった、山白桜が眠たそうに話しかけた。
「おはよ!昨日ちゃんと寝た?」
声のトーンを揃え、山白の目の下を見る。
「クマ出来てる」
眠気が一気に覚め、急いで鞄から鏡を出す。
「うげっ!」
鏡で自分の目の下を見ていると、いつの間にか山白の後ろに先生が立っていた。
「(……前だけを見とこ)」
心の中で手を揃えると、他人のふりをした。
「……山白?授業中に鏡を見ているのには、相応の理由があるのか?」
青筋を立てながら山白の肩に手を置く。
「ヒッ!!!」
機械の様に後ろを振り向き、顔を引き攣らせた。
「そんなに私の授業が面白くないのだな?そうか……ならば、特別課題を出してやる」
満面の笑みで山白の顔を覗きこむ。
「せ、せんせ~?け、けい、敬語が無くなって……、当然ですよねー。すみませんでした」
先生の無言の圧力で素直に謝った。
「仕方ありませんね。課題はまた今度にします」
「やった!」
山白が小さくガッツポーズをすると、先生は呆れたように前へ戻った。
「あいあむうぃなー」
ブイサインを天羽に向け、もう一度夢の世界へ旅立った。