あれから墓石を元に戻し、少し喋った後、天羽は校舎に戻った。
「五木ー、遅刻だからなー」
一時間目が終わり、二時間目が始まる時に教室の前で呼び止められた。
「槇さ……江藤先生、しょうがないですよ!朝の生徒達が明日香さんの墓石と花畑を荒らしたからであって、怒るならあの生徒達に言ってください!!」
壁に背を預けていた担任の江藤はため息をついた。
「だろうとは思ったけどな……ハァー」
「それじゃ、また放課後に詳しく話しますね!」
天羽は笑顔で教室へ入ってゆく。
「あーー、俺まだ23何だけど?何でこんな苦労ばっかり……」
背を丸め、フラフラと理事長室へ向かう。
「失礼します。1年4組の担任、江藤です」
理事長室と書いてある扉の前で、礼儀正しく声を出す。
「入りたまえ」
「失礼します」
扉を開き、中へ入ると、とても教師とはかけ離れる態度をとる。
「ハァー、朝の事件はやっぱりでしたぁーー」
ソファにもたれて目を閉じる。
「ははっ、苦労するねぇ、君も。五木くんは活発な女子高生だからな!」
先程の威厳のある顔を崩し、向かいのソファに腰掛ける。
「詳しくは放課後に説明するそうですよ?」
理事長は身を前に出して顔をニヤつかせる。
「それも大切だが……。君は何時になったら五木くんに告げるんだ?」
閉じていた目を開き、勢いよく立ち上がる。
「なっ、にを!?別、別に……あいつ好きな奴いるし……」
頬を赤く染め目を逸らす。
「好きな奴!?ほぅ……だが君は、負ける気なんて無いんだろう?」
今度は顔ごとそっぽを向き、耳まで赤く染める。
「君は意外と純情だな」
「なっ!?」
理事長は勝ち誇ったような顔で江藤を見る。
「……っ負けた!!」