「あれから、もう3年経ったんだね?」
ゆっくりとした春風が髪を揺らす。
「今頃何してるかなぁ……」
春といってもまだこの時期で、寒さが身に染みる。自然と足取りが遅くなる。
「あー、本当に私駄目だな」
足取りが完全に止まり、空を見上げる。
「……あんたのことが頭から離れないとか、重症だね」
静かに風が吹く中、ゆっくりと頬を伝ってゆく。
「……何で泣いてんの、私」
手の甲で勢いよく流れ落ちる雫を拭う。
「天羽」
ふいに名前を呼ばれた気がした。
とても懐かしい、優しい響きのある声を。
「また、いつか会おうね?」
いつの間にか頬を伝う雫は消え、あるのは笑顔と確かな足取りだけだった。