「――――何でもない」


不意に、泣きそうになった。


ポツリと、そう返しながらも思い出すのはあの夢。


そういえば、山崎はあのこけし人形を捨てておいてくれただろうか?



「そろそろ、お前の着物買いに行くか」



ポンポン、と私の頭に手を乗せながら、土方はフンワリと笑った。


一々頭を叩いてくるの意味が理解できない。


自分の背が高いことを、自慢したいのか?



「・・・・・うん」



歩き出した彼の背中を追いかけながら、私は脱げそうになる草履にもう一度足を通した。


歩くのが早い土方に追いつくのは、結構きつい。