涼しげな廊下の影から、一つの真っ黒な影が飛び出した。


無表情、寡黙な剣豪、居合いの達人。


斉藤が、息を切らして声を張り上げていた。



「ハァッ、ハァ、千歳、さんがっ」



嫌な予感に、自然と息を止めていた。


・・・・・時間が、やたらと。


斉藤が再び口を開くまでの一瞬が、嫌に長く感じられた。



「千歳さんが、いませんっ!!

・・・・・千歳さんの荷物も、失くなってるんです!!」



寂しそうに、切なげに微笑んだ今朝の千歳が、何故か頭に蘇った。