それが、自分の頬を伝って落ちたものだと、気付くのにそう時間は掛からなかった。


慌てて目元を拭い、グッと唇を噛み締める。


そっと目を開いた泉箕は、俺を見つめながらゆっくりと口を開いた。



『・・・・・千歳は、人の子として生きるには、もう時が流れ過ぎた。

千歳は――――消え行く定めに、あの日身を投じたのだ』



神とは虚しいモノだ、と泉箕は言った。


残酷なほど時はゆっくりと流れ、一番欲する時にはもう残っていないのだから。


・・・・・と。



「怖く、ねぇのか?」



そう呟く俺に、泉箕は弱々しく首を横に振った。