幻想的に浮かび上がる、見慣れた風景。

僕は鼻唄なんかを歌いながら、高架の階段をリズム良く上る。

家まであと少し、あと少し。



そうして、やっと階段を上りきった僕の目に

「ん?」

線路の先を見詰めながら、高架の真ん中で佇んでいる、一人の女性の姿が飛び込んできた。


僕に気付かないのか、微動だにしない。


―― こんな時間に珍しいな


通り過ぎようと思った僕だけど

「あの……」

やっぱり気になって、声を掛けてしまった。


振り向いたのは、瞳の大きな、とてもキレイな女性だった。