それにしても、だ。
僕は本当に彼女を心配しているのだけれど、
「家はこの辺りなんですか?送ります」
昨今では不審者と思われないように気を遣わなくてはいけないのが、本当に悔しくて、情けない。
「ありがとうございます。家は七海駅の方なんです。この辺りでタクシーを拾えるところ、ご存知ないですか?」
しかし、そんな小心者の僕の心を見透かしたのか、全く警戒心を抱かぬふうの彼女。
同時に、僕は僕の想像以上に、彼女が複雑なルートでここに迷い込んでいた事を知る。
そして
「タクシーですか?うーん、じゃあ、あの広い通りまで歩けます?」
“一応”彼女の足を心配してみたりする僕に
「はい、全然歩けます!」
あっさりと、明るく言う彼女。
それを聞いて、僕は思わず笑顔になる。
僕は軽くうなずくと、少し交通量が多い通りまで、彼女と一緒に歩く事にした。