「婚約者…?」
悟の言葉に、五十嵐刑事は呆然と悟を見る。
「正確には、義務づけられた婚約者候補がね……。」
「どういうことなんだ?」
五十嵐刑事は真剣な顔で、悟の次の言葉を待った。
「その女の子は、ある家の跡取り娘なんだ…。」
悟は話しながら、パソコンの前に座る。
「跡取り娘…?」
「その子の家は、長年続いた伝統ある一門なんだ…。
その家は昔から女性が跡を継ぐことになってる…。」
「……。」
五十嵐刑事は黙って話の続きを待っていた。
悟はパソコンの検索を消す。
(父さんには悪いけど、癒麻ちゃんが桂木の人間だと知られるわけにはいかない…。)