「『予備』を教えても良かったんじゃねぇのか…?
なんで言えねーんだよ…?」
樹は眠る癒麻の顔にかかる髪をすくい上げた。
「結局俺は、癒麻を誰にも渡したくないだけだな…。」


「うーん…。」
夜の九時を回った後、癒麻は目を覚ました。
「ずいぶん眠ってたのね…。
樹…?悟くん…?」
癒麻は自分の部屋を見渡す。
眠る前にはいたはずの樹と悟の姿がなかった。
「なんだよ?目覚めたのか?」
「樹…、たった今ね。樹だけ?悟くんは…?」
一瞬ピクッとして、樹は顔を反らす。
「さっき帰った…。用があるって言ってたな…。」