……でも、それなら。
何でこんなに頼りがいがあって格好良い流血ちゃんが、交通事故の多い国道で信号を守らずに飛び出したの?
本人は、“具合が悪くてボーッとしてる”って言い張ってるけど…。
「…そろそろ、おいとまします。先輩、送ってくれるんでしたっけ?」
「…え? ああ、うん」
流血ちゃんが立ち上がったから、あたしは慌てて財布とスマホをポケットに放り込んだ。
「それじゃ、母さん。ちょっと行ってきます」
「色々とありがとうございます。御世話になりました」
流血ちゃんが深々と御辞儀したのを見た母さんが、笑顔で喋ってる。
「いいえ~。またいらっしゃいね」
「はい。ラーメン美味しいんで、また食べに来ます」
……だから、何で母さんは、普段とは別人のように流血ちゃんに優しいんだろ?
店を出ると、太陽は西に傾いて、日差しはずいぶんと弱くなっていた。
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