今は準備中でお客様が来る筈は無いのに、咄嗟に営業スマイルを浮かべた母さんは凄いと思う。
そんな母さんは、お客様用のポットに入った、冷えた水をコップに入れて渡してくれた。
「冷たい水です。飲めますか?」
「はい」
コップを差し出すと、その人は勢い良く水を飲みだした。
うん、さっきよりも返事がしっかりしてる。
これなら大丈夫みたい。
……しかし、なかなか素晴らしい飲みっぷりだな。
こりゃ脱水症状でしょ。
その人が水を飲み干して、「おかわり貰えますか?」と聞いてきた時に、思いっきり目が合った。
灰緑色のカラコンのような目に、灰緑色の目立つ髪。
間違い無い。
「……あ」
「因幡、流血ちゃん?」
再び母さんに頼んで貰った水を、流血ちゃんに渡す。
流血ちゃんはまたもや素晴らしい飲みっぷりで、コップを素早く空にしていった。
「何? 知り合い?」
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