この際、潰れちゃったタマネギが道路を汚しちゃった事は、目を瞑ってもらおう。
今はこの人の方が大事でしょ。
熱中症かもしれないし、もっと大変な病気かもしれない。
「…う、う~ん」
「歩けます? 良ければ肩、貸しますよ」
「……お願いします」
信号はまた赤になっちゃったので、再び青になるのを待つ。
みるみる無惨になっていく、潰されたタマネギ。
「信号渡って少し歩くとラーメン屋があるんですけど、そこはあたしの家でもあるんで、そこで少し休みましょう」
「…はい」
意識があるようで良かった。
救急車を呼ぶ必要は無さそう。
少し落ち着いてくると、隣りに立つ人の声に聞き覚えがあるような気がしてきた。
信号が青に変わったので、肩を貸しながら歩く。
そのまま歩き、準備中の看板を無視して三河屋に入った。
「いらっしゃいませ~」
「母さん、コップに水くれる?」
営業スマイルを浮かべた母さんに声をかけた。
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