「病院で聞かされてなかったの?」

「うーん……」


俺の質問に、首を傾げる上野。
少し考えてるようだが、曖昧な返事しか返ってこなかった。


「言われたかもしれないけど……、よく覚えてない。現実を理解する方が大変だったし、お医者さんも私には知らせなかったかもしれないし」

「まぁな…」



確かに、気が付いたら一カ月弱近くの時が流れていて、“貴方は交通事故に遭って、意識を失ってました。交通事故で彼氏が失明しました”なんて言われたら、誰だってパニックになるよな。

医者や周りの看護士が、上野のパニックを減らそうとして、その事実を伝えてなかったとしてもおかしくないかもしんない。

だけど、周りが上野を思いやって知らせなかった事実が、俊秀を苦しめてた事には変わりは無い。


「…とにかく、上野はそんな酷い状態だったらしいよ。それもあって、俊秀は本当に色々悩んでた」





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