「あ、あの、先生、先輩も予定があるでしょうし、俺一人で帰れますから…」


「なにお前、真鍋と一緒に帰りたくないの?こないだまで真n…」

「うわぁぁ!俺、帰る準備してきます!」

「おーいってら。走んなよー」



あんなに慌てた中川くんを今まで見たことがあるだろうか。いやない。


ひょこひょこと足を引きずりながら小走りする中川くんの背中を見つめて疑問に思う。



「今のはなんですか?」

「なんだろうなぁ…」


なぜか遠い目をする松下たつのりに首を傾げながらこれからのことを考える。

このままここで待っていたら、最終的に中川くんと一緒に帰ることになりそうだ。


それだけは避けたいと思ってしまうのを許してほしい。


だって、あんなに好きだった人なのだ。

今になってもまだ忘れられていない人なのだ。


こんな状態で長時間一緒に居なければいけないと言うのは、なんという苦痛だろうか。



「あたし、帰りますね」

「え、用があったんじゃないの?」

「ありましたけど、そんな長時間一緒になんていれませんから。さっき言ったでしょうに、あたしが会いたいと思ってるわけじゃないって」

「でも用はあるんだろ?」

「……それはそうですけど、一言でいいんですよ。そんな長い時間はいらないんです。ということで、あたしはもう帰りますから」