「へうぇ?!」

「奇声を上げるなうるせえな」


口の悪い教師から視線を外し、勢いよく後ろを振り向くと、そこには左足にテーピングを巻いた中川くん。


そして、中川くんに寄り添うように立つどこかで見たことのある黒髪の女子生徒。

あぁ、この子がマネージャーか。



「押見、その足、なんだって?」

「転んだ時に一緒にひねったみたいで、今日はもうやめておいた方がいいって言ってました」


少し長めの黒髪をシュシュで一つにまとめている彼女はとても色白で、サッカー部のマネなんてしたらたちまち焼けてしまうんじゃないかといらない心配をしてしまう。


「じゃ、中川はもう帰れ」

「いや、あの、筋トレとかなら、できると思うんですけど…」

「や、お前無理しそうだからダメ。せっかくだから真鍋と一緒に帰れ」

「うぇ?な、なにを言って…」

「真鍋は中川に用があんだろ?じゃあちょうどいいじゃんか。こいつの見張りしながら帰って」


な!っと爽やかに決めた松下たつのりであるが、こちらとしては迷惑極まりない。


なんで一緒に帰らなきゃいけないんだ!

あたしはちょっとお時間いただいて今付き合ってる人いる?はいいます。だよねー!っていう会話が成立すればそれでミッションクリアなんだ。


一緒に帰るとか、長いよ!

そんな長時間一緒にいるとか耐えられないよ!


しかも二人きりとか、こいつはあたしに心臓超稼働で死ねというのか!