「化粧とかも、こっちの方が似合うって。」


ページを捲る指先を、玲の手のひらが、遮った。


「ん、―――?」


「全部、航太の好み、なの。

航太が私の基準だったから。

…だから、今はそんな恰好、したくない。」


―――――――!!


「は、―――――?

何、それ?」


「全部、なの。

航太が好きかどうかで、選んでた。

服も、お化粧も、髪型も。

可愛らしいものに囲まれて、好きな人の為に健気に頑張って…。

航太が喜んでくれるか、どうか…。

それが私の基準だったから。

だからね、嫌なの。

そういうところから変えていこうって、思って…。

航太を、―――――。

航太を一生懸命追いかけていた自分を思い出すのが、嫌だったの。」


「……っ!!」


ちょっと、待って。

それとこれとは、全く違うことなんじゃないのか?


「玲、――――。

じゃあ俺が好きな格好とかは、してくれないわけ?」


俺は玲に問いかける。


「男なら彼女が可愛い格好してくれるのは嬉しいと思うけど。

昔がどうとかじゃなくて、似合ってたらいいんじゃないの?

たまにはさ、…。

俺の為に、こんな女の子らしい格好してくれると、俺はすごく嬉しいよ。」


「やだ。」


―――――――!!