「へえ、玲ちゃんて…。

健気で男心を擽るタイプなんだね。

まあ、あの頃の玲ちゃんってさ、航太の横にちょこんと座って。

航太がせっせと世話を焼いてさ。

航太のタイプって、こういう守ってあげたくなるような子か、なんて思った記憶、あるよ。」


紺ちゃんがうんうんと頷きながら言うと、綾子が躊躇いながら訂正する。


「そうじゃないのよ…。

あの頃の玲は、確かに渡瀬さんが全てだったけど…。」


何ていうか、ちょっと違うんだよね…と、口籠る。


「学校もバイトも、両方頑張ってたのは、渡瀬さんに褒めてもらいたかったんでしょう?

だから、――――。

手を抜かずに、コツコツ努力してたのよね?」


「綾ちゃん、よくわかってるね。」


さすが、だね…。


私は綾子の洞察力に驚嘆するしかない。


「玲はきっと…。

渡瀬さんのカラーに染まりたいというよりは、渡瀬さんに認めてもらいたかった。

そうなんでしょう?」


―――――――!!


「あの頃の玲って、―――。

渡瀬さんのこと、すごく尊敬してたもんね。

邪魔をしたり、困らせるようなことも言わなかったし…。

何より、我儘、言ってるの、聞いたことがない――。

彼氏のことを尊敬してるって、堂々と言える玲がすごいなって思ってたの。」


「綾ちゃん…。」