「…分かった。明海さんにお礼言っておいて?」
「まあ気が向けばな。用はそれだけだ、帰れ帰れ」
自分から呼び出しといてそれはないでしょ。
そんなことを思いながらも私は言われた通りに素早く学校を出た。
時刻は午後6時過ぎ。
ほとんど生徒は残っていなかった。
辺りも夕焼けではなくて、ほぼ真っ暗。
…冬だもんね、そりゃ暗いか。
私は一人ぽつんと紙袋を持って家へ帰る道を歩いていた。
すると、前方から3人ほどの声が聞こえてきて私は道の端っこへ寄って再び歩き出す。
「玲音ってほんと無口だよな」
「うんうん、俺も思う」
「…そうか」
そんな話し声が聞こえた。
暗いからよく見えないけど高校生だと思う。
玲音と呼ばれた人は私の横を何事もなかったかのように通りすぎた。
私もまた、その横を平然と通りすぎた。